堀切和雅の本はすべて現在でも入手可能です。




三〇代が読んだ「わだつみ」
(築地書館 1993) 1700円+税
 デビュー作にして長らく最高傑作だった。30代の、もはや「おじさん」の声もかかった著者が、『きけ わだつみのこえ』を繰り返し読み、多くは20代で戦陣に散っていった若者たちの内面 の声を聴き、「あの戦争」の本質を考える。
 新聞などで非常に大きく取り上げられ、短い間に4刷りまで行く。
 右翼左翼に関わりなく好評だったのがこの本の特徴。反戦の集会にも呼ばれたし、靖国神社で行う戦友会などにも招ばれ、「よく、私たちの時代を、精神を書いてくれた」「そうだったんだ、君の書いたとおりだったんだよ」などと言われ恐縮するも、大きな仕事を成し遂げたらしいことに安堵する。文庫化を何度も断って、築地書館で初版時の形のまま存続。





結論を急がない人のための日本国憲法
(築地書館 1994) 2000円+税
 ある意味で早すぎた本。自分を戦後民主主義者と信じて疑わなかった著者が、それを、書くうちに疑い始める。普遍主義と伝統主義の間で最適解を求め、「左翼」の「進歩主義」への素朴な信頼を失っている自分に気付き、けれど決して反動に走りたくはなく、憲法を社会の、自分の「いま」に活かす道を探って苦闘する。著者はこの本の執筆で、雪の山中への「自分カンヅメ」も決行。自己の基盤を成す思考の解体的出直しに直面 して、結局寝てばかりいた。
 そして夢の中で紡がれたこの書物は、セールスとしてはNG、しかし一部の読者には「ほんとうに、一行も目を離せず読み切ってしまった」というくらいの衝迫力をもった。歴史から忘れられかけている1冊。さあ、掘り出してみよう!





「30代後半」という病気
(築地書館 2000) 1800円+税
 演劇の方が忙しくて沈黙していた著者久々の、クリーン・ヒット。30代も後半に入り、「自分は基本的にはもはや転職できないのだ」ということに気付いた著者が、ひどい閉塞感と鬱症状に襲われる。結婚して鬱、家を買って鬱。次々と人生の進路を決めなければならない年代特有の、重さ。若いデート時代とは一変した、地面 にしっかり繋がれる思い。「だけど、ボクはもうしばらくふわふわとんでいたいんだよう!」成熟の仕方が分からなくなったこの時代に、面 白おかしくもがく自分を描く。
  その深刻なのに軽快な文章は爆笑をも誘い大変好評で、これで多くの出版社から執筆の引き合いが来ました。





「ゼロ成長」幸福論
(角川書店 2001) 600円+税
「金融ビッグバン」以来始まった「大競争」「勝ち組、負け組」の狂った言説に著者が放った「屁」。いまや新自由主義、リバタリアニズム(極端な私有主義)と呼ばれるに至った市場原理の全面 展開は、殆ど総ての人を不幸にしている! 文化や芸術でさえ、そこでは資本の虜。そんなものを「買って」いるより、自分たちでつくった音楽を楽しんだり、ローカルな文化的結びつきをつくったり、江戸時代の町人みたいに愉しめば? という本。「カネに替えられない価値」を自覚することが、「すべてがカネ」の世界への復讐であり、それを掘り崩すことになるのだ! ダグラス・ラミスの本が好きな人などはメチャ共感するでしょう。あちこちで引用・再引用され、好評。





不適切なオトナ
(講談社 2002) 1600円+税
 筆者の「鬱本」第2弾。これは濃ゆくてですねー、筆者が劇団「月夜果 実店」でもこだわり続けてきた「宇宙の果ての向こうは何?」「時間は流れているとして、それはいつ始まったの? いつ終わるの?」といった問いが全面 展開されています。この本では、「宇宙の仕組みが分からないのが、自分の鬱と肩こりの原因だ」と断定しています。でもそんなことってあるのでしょうか? それはやがて覆されることになるのですが……。
 青春期の、こだわりのこだわりのこだわりの、最後のこだわりの本。でも世の中に、こういうことにこだわっている人ってけっこういると思う。こういう本が大手出版社から出てしまったことが、痛快。





娘よ、ゆっくり大きくなりなさい
(集英社新書 2006) 600円+税
 これが著者のコンテンポラリーな本。今までの延長された青春のお悩み本とは一線を画し、難病を持った娘との暮らしが淡々と、しかし彫り深く刻まれています。筆者としては、どれかと言えばこの本を読んで欲しい。元は、東京新聞での連載「歩くように 話すように 響くように」。連載時も、本になってからも、非常に多くの方々からお手紙を頂きました。テレビの取材は、テレビ朝日の「スーパーJチャンネル」が06年12月にオンエア。TBSが07年1月9日、特集「私たちこんな病気と闘っています」で。フジテレビでドラマ化の話もありますがこれは未定。
  筆者の後半生は、難病の娘のおかげで非常な目標を得ました。それは人々の社会観の、カクメイに関わることです。続く本でそれを実践していくでしょう。


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